2013年9月5日木曜日

総主事コラム「こもれび」2013年9月

「つばめのように」

つばめの母さん 
ついとでちや
くるっとまはって
すぐもどる。
つういと
すこうし行つちや
またもどる。
つういつうい
横町(よこちょ)へ行つて
またもどる。
出てみても
出てみても
氣にかかる
おるすの
赤ちやん
気にかかる。
(金子みすゞ)

 この夏もあちらこちらで、つばめの巣づくり、子育てを見かけた。私の通勤途上の駅舎の軒下にも、あっという間に巣ができた。駅員が慌てて「つばめの子育て中」の掲示と転落防止柵を設け、つばめの子育て支援が始まった。駅舎の中を超低空でえさを運ぶ姿に驚いたが、つがいのつばめが詩のように、せっせと餌を運び成長する姿は、楽しく、駅舎では毎日親子で観察する姿や写真で成長を記録する方もみられ「大きくなりましたね」と声を掛け合うなど、平和な風景が生まれた。
 今年は7月に飛び立った巣に、突然8月に新たなつがいが登場し、同じ巣で2回子育てを見ることができた。駅員は大慌てで「2回目の子育て中」の掲示。暑い夏、つばめの子育てを楽しんだ。つばめの親子と同じように人間の子育ても優しく、みんなで見守りたい。
 しかし、90年前の関東大震災での流言蜚語による朝鮮人虐殺を思うと、異なった文化や国が違っても同じ人間として子どもを守り、育てる親同志、生命や人権を奪うことなく認め合う寛容な社会をつくりたい。つばめを愛せるように、異なった文化を持つ人を愛せるよう、内なる差別や偏見の心の芽を摘み取る心を育てたい。                         

総主事 田口 努
写真は関東大震災時朝鮮人虐殺90年神奈川実行委員会(横浜YMCA共催)が
5月に行った虐殺の地をたどるフィールドワーク