2011年6月4日土曜日

総主事コラム「こもれび」2011年6月

「海の恵み再び」

波は子ども手つないで。
笑ってそろって来るよ

波は消しゴム砂の上の文字をみんな消していくよ

波は兵士 沖から寄せて、
一遍にどどんと 鉄砲うつよ

波は忘れんぼう
きれいなきれいな貝がらを
砂を上においていくよ
(「波」金子みすず)

東日本大震災の支援のシンポジウムで、海洋プログラムを通して、海の恵み、海の楽しさを伝え自然との共生を学ぶ自然学校の指導者が述べた言葉は印象的だった。「今、海の怖さから、海と離れようとする状況がある。しかし海に囲まれた日本に住み、海の恵みを受け、海に育てられた事を忘れてはいけない」。 海、自然の怖さを知りながらも、自然との共生を目指そうという思いを感じた。海に全てを流された被災された人々に聞くと「また海に出たい」という人が多い。そして、どんなにか素晴らしい海かを語り、時には、手に入れた鰹をボランティアにふるまってくれたりする。海への恐怖におののきながらも海からの恵みを忘れず、感謝しつつ歩もうとする海の民の底力に驚く。

そんな海を感じる金子みすずの「波」の詩だ。この詩に曲をつけた星重昭さんのCDを聞いた。穏やかな海が感じられる曲が突如激しくなり、また静かな曲調になる。星さんの故郷は、被災地の宮城県七ヶ浜だ。故郷の惨状を見て、立ち上がった。震災発生日の11日に毎月チャリティコンサートを開催し、復興の道筋が出来るまで続けるという。美しい波が海に戻るまで、忘れずに、支えていこう。         
(横浜YMCA総主事 田口 努)
*写真は星重昭さんのオリジナルCD「林檎畑」