「君は君」
カラスはやっぱりきらわれるね
なぜだろう
羽が真っ黒で不気味だから
それとも
口ばしがとがっているから
カラスは なにもしなくても
きらわれるね でも
ぼくは、きらいじゃないよ
きみが カラスだってこと
みとめているから
(詩 伊藤英高)
この詩を書いた伊藤英高さんは、自閉症の障がいを持つ青年だ。話すことは苦手だったが、小学生の時、それまでは全然書く気配がなかったのに、鉛筆を持っている手にお母さんが軽く手を重ねると、安心したようにすらすらといろいろな思いを書きだした。それから、次々と詩を書き続け、読む人の心を惹きつけ心を揺さぶっている。この詩に感動した声楽家が曲をつけコンサートを開くことなり、その手伝いをした事がある。幼小時の担任だった先生や地域作業所の職員と共に手作りのコンサートだったが満員となり、地域の福祉啓発運動になった。ついには、詩に絵を組み合わせた絵本「きらわれカラス」が大日本図書から出版された。言葉や行動でのコミュニケーションは苦手だが、内面から湧き出てくる言葉の純粋さに、多くの人の心を動かした。 冒頭の詩では、「みんなと違うことから、きらわれるのかな」という思いから「だけど君は君だよ」、みんなと違っても「君は君だよ」と「ぼくは、認めているから」という強いメッセージを感じる。5月は、新学期、新年度から一月が経ち学校や職場では、様々な人間関係から、不登校や出社拒否が増える時期だと言われている。この詩のように、君は君だよと認める仲間や場と出会い、明るく歩んで欲しい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)