「いのち見つめる時」
ふるさとは
ただ静かにその懐に
わたしを連れ込んだ
雲でもなく幻でもなく
生きた眼と心を持って
わたしは入っていった
青いにおいにむせかえって
ことばもなく遠い日の記憶が
足からよみがえった
(「光る砂漠」より矢澤宰詞)
クリスマスのイルミネーションが瞬くみなとみらいホールで、横浜YMCA混声合唱団51回目の定期演奏会が先月開かれた。4部構成だったが、一貫していのちを見つめ平和を感じるメッセージを響かせていた。
冒頭のアベマリアに続いて壮大な組曲「無言館」が歌われた。無言館は、長野県上田市にあり戦没画学生の残した遺作が展示され、戦争に赴くときに友、親、妻、祖父母、恋人などを描いている。大学生と若い世代がいのちと向き合った戦争のむごさを無言で語っている。その思いを綴った組曲は心に響くものだった。 3部では21才で天に召された矢澤宰の遺稿詩集から作曲された合唱組曲が歌われた。重い病に伏せながらも美しい言葉が綴られていた。最後は東日本大震災の被災者へ元気をおくろうと「元気をあなたに」と名曲がメドレーで歌われ、元気をいただいた。
12月は太平洋戦争が開戦した月であり、イエスキリストの誕生したクリスマスでもある。いのちの誕生、いのちの輝き、いのちの意味を考える月でもある。クリスマスの物語をみると、住み慣れた故郷を追われ仮の宿でイエスが生まれた。いわば難民であり、そのような人々にも平和と平安があるようにと言うメッセージだ。この寒空で、ふるさとを離れ、仮設住宅や避難先でクリスマスを迎える方がいる。その方々にも主の恵み、慰め、平安がありますように。
(横浜YMCA総主事 田口 努)
*写真はYMCA保育園のクリスマスページェント