2011年5月11日水曜日

総主事コラム「こもれび」2011年5月

「復興の礎に」

芥子種(からしだね)ァ
土ざ蒔がれっ時(とぎ)ァ、
この世のどの種よりも
微少(とべあっこ)だども
蒔がれっちうど
成長(おが)って、
成長(おが)って、
如何(なぞ)な菜っ葉よりも大ぎぐなって、
その大ぎく張った
枝の蔭っこに空の雀ァ
巣ゥ食うくれァんなる。

(マルコ福音書4章30節)

これは、岩手の大船渡や宮城の気仙沼地方で話されていた方言であるケセン語に訳された聖書の言葉だ。震災から四週目に、津波ですべてを失った人々のアルバムや思い出の品を瓦礫の中から探すボランティア「思い出で探し隊」が行われた。被災された方と共に探す中で、出てきたのが、この聖書だ。印刷した社長さんが丁寧に拾い出し、参加した横浜YMCAのボランティアに津波から生還した聖書を下さり、YMCAに届いたものだ。家や家族を失った方々が、小さな思い出を見つけては喜びあう姿が拡がった。私も避難所で人形劇で子どもたちの笑顔取り戻す活動や、暖かいコーヒーやお菓子でもてなすボランティア活動に参加した。避難所の子どもに声をかけウエートレスボランティアをお願いしたが、役割を見つけた子どもたちが、元気に避難所中に注文を取り付け、おばあちゃん、おじいちゃんが嬉しそうに注文し、避難所が活気づいた。「被災後、初めてイスに座ってコーヒーを飲んだ。日常の暮らしを取り戻したみたいで嬉しい」と笑顔が拡がる姿を見た。この大規模な被害の中で、各地で行われている支援活動は、芥子種ほどの小さなボランティアの働きだが、被災者に寄り添い、励まし、いつか雀がとまるほどの大きな枝をはり、復興の礎となることを願いたい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)