2010年11月4日木曜日

総主事コラム「こもれび」2010年11月

「家族の平和から」

赤ちゃんが笑った
かわいいほっぺが笑った
赤ちゃんの手はちいさいからかわいいね
赤ちゃんの足はちっさいからかわいいね
自分がかわいいって
わかんないから
うんと かわいいね
(詩 伊藤英高『こころのうた』より)

児童虐待や、子どもの自殺のニュースが絶えない。未来を担う子どもたちの幼い「いのち」が奪われることほど、心が痛むことはない。しかも愛されるべき家族からの虐待を受け保護される児童は、増加の一途で児童相談所やその子どもたちを保護する施設が足らない状態であるという。11月は、横浜YMCAの平和月間だ。戦争や争いをなくし、世界との交流を進めることは、とても大切なことだ。しかし、その根底にある人を信頼するこころを育む家族の関係の希薄さが増しているのが気に掛かる。平穏に、そして家族が仲むつまじく和を生み出す家族の関係こそ平和を生み出す人が育つ礎だと思う。この詩の赤ちゃんが笑うのは、赤ちゃんを笑顔でのぞき込んでいる親や家族がいるからだ。全てをゆだね生きている赤ちゃんだからこそかわいいのだが、全てをゆだねられている親や家族にとって赤ちゃんのひとこえ、動作、笑顔に喜び、微笑んでしまう。その笑顔が広がっていく光景は、平和を感じるひとときだ。赤ちゃんは、きっと「かわいいから笑らっているんじゃないよ、安心だよ、信頼しているから全てをゆだねられるよ」と言っているように思う。このような家族の絆が育まれるよう家族の平和を共に考えつつ、地域の、世界の平和を考えるときでありたい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)