遠き国や海の果て
いずこにすむ民も見よ
なぐさめもてかわらざる
主の十字架は輝けり
*なぐさめもてながために
なぐさめもてわがために
揺れ動く地に立ちて
なお十字架は輝けリ
水はあふれ火は燃えて
死は手ひろげ待つ間にも
なぐさめもて変わらざる
主の十字架は輝けリ
(*繰り返し)
(聖歌397番)
91年前の9月1日、関東大震災当日に、宣教師J.V.マーティンによって、作られた讃美歌だ。大阪に住んでいたが所用で上京している折に被災し、芝白金の明治学院の運動場に避難した際の光景を見て想いを綴ったのがこの詩だ。
夜を迎え、九死に一生を得た人々に蚊帳とろうそくが支給された。その暗闇を照らすろうそくの光が「救い、希望を」あらわす十字架のように見え、この詩が誕生した。その後、中田羽後の訳でロードヒーバーが横浜YMCAで歌ったのが世界の初演だったそうだ。
震災という困難な中にあって、横浜YMCAでも、今につながる震災復興支援活動を行っている。がれきの中で子どもを励ますキャンプがはじまり今年で90を迎える。
震災からボランティア、讃美歌、キャンプなど人々を励ます働きが生まれた。しかし、忘れてはいけないことは、震災直後に起きた朝鮮人虐殺だ。当時の横浜YMCAの記録によれば「二度とこのようなことが起きないよう朝鮮、中国、日本の青年たちの人としての交わりを深め、差別や偏見を取り去る働きが最も重要である」とある。この先達からの思いをつないでいきたい。
(横浜YMCA総主事 田口努)