2014年5月10日土曜日

総主事コラム「こもれび」2014年5月

「見えないことづけ」

だれかに あいたくて
なにかに あいたくて
生まれてきたそんな気がするのだけれど
それが だれなのか
なになのか
あえるのは いつなのか―
おつかいの とちゅうで
迷ってしまった子どもみたい 
とほうに くれている
それでも 手のなかに
みえないことづけを
にぎりしめているような気がするから
それを手わたさなくちゃ
だから あいたくて
(「あいたくて」詩 工藤直子)

 詩人の工藤さんは「のはらうた」という詩集の中で、「あげはゆりこ」「あらいぐまげん」「石ころかずお」というように虫や動物や植物や石ころまで名前をつけて、小さな命を愛でるような詩を書く。大好きな詩人なので、一度、会いたくて、工藤さんに会いに行ったことがある。
 東日本大震災の支援活動を続けて1年後の春。被災する子どもの心のケアの一つで、子ども文庫を創ることになり、工藤さんが著書の寄贈と、子どもたちに、会いたいと被災地に赴いて読み聞かせをしてくださった。工藤さんの楽しい世界に子どもも大人も笑顔満面の場面に立ち会った。この詩は「この世に、どんなご用があるのだろう・私にもできるご用はあるのだろうかといつも、そのご用にあいたい」という思いだと聞いた。
 今は「地球をほれぼれと見つめ、拍手し、恋文を書き続けるご用を果たしたい。地球、あなたのところに生まれてよかったよ。会えてよかったよ」と言っている。
 人や日々の小さな命と出会いながら、生かされている恵みに気づき、感謝し、私のできること「見えないことづけ」「ご用」を探し続け、手わたしていきたい。
(横浜YMCA総主事 田口努)