2014年4月10日木曜日

総主事コラム「こもれび」2014年4月

「花が咲くように」

冬があり 夏があり
昼と夜があり
晴れた日と
雨の日があって
ひとつの花が
咲くように
悲しみも
苦しみもあって
私が私になってゆく
(詩 星野富弘)

 桜が花開き、喜びあふれる春を迎えた。中央YMCAの前にある横浜公園は、桜が終わるとチューリップが一斉に咲いて見事だ。横浜YMCAが被災地に贈ったチューリップも少し遅れて、仮設住宅や学校、施設などで花開く頃だ。
 90年前の関東大震災でも横浜YMCAは、横浜の街を花でいっぱいにする運動を繰り広げ、数万袋の花の種を配布した。今も昔も全てを失い、時を失い、色を失った被災者のもとに咲く花は、季節という命の時を届けてくれる。花を自ら育てると新しい命に寄り添う気持ちがわいてくる。
 事故で体を動かせず口に筆をくわえて詩画を描く星野富弘さんは震災以降描けなくなった。ある時、星野さんは津波被害の映像で小ぶりの桜が咲いているのを見て、大きな桜は折れて流されたが、細く弱い小枝が故に、津波の流れにしなって流されず、小さな可憐な姿で人を喜ばせていることに気がつき、再び詩画を描き始めた。
 今、被災地の各地で行われている誌画展では「命が一番大切だと思
っていたころ」という詩が人々を励ましている。
 スタートの春、それぞれ自分の花を咲かすよう歩み始めた。順風満帆ではないかもしれないが「私が私になってゆくよう」、泥水を吸っても美しい花を咲かすように、見えない地下の栄養を蓄える時こそ大切
にしたい。
(横浜YMCA総主事 田口 努)