2014年2月5日水曜日

総主事コラム「こもれび」2014年2月

「名前を呼び合う」

きょう うちにシンガポールの
女の子がやってきた
名前をヌルルといい 
英語しかしゃべれない 
ことばが通じるか 
とてもどきどきした
「ヌルル」 ゆうきを出して
名前をよんでみた 
ヌルルはじっと私のかおを見た
そして「イエス」といった
私はとってもうれしかった  (詩「ヌルル」 長門 遥 小3 )

 ヌルルちゃんと遥ちゃんともに、この瞬間をずっと心に刻んで大きくなる。名前を呼ぶということは友だちを作る第一歩だ。初めての友だちに声をかけるだけでもどきどきするが、言葉が通じないのだから、本当に勇気をふりしぼったに違いない。顔を見合って「イエス」と返事が返った時の喜びが伝わる詩だ。
 YMCAのプログラムでもこのような場面がたくさんある。水泳や英語、キャンプでも小さなグループでの活動が基本だ。そこで初めて出会う子どもたちが自己紹介し、互いの名前を呼び合うようになれば、もう友だちのはじまりだ。
 言葉が通じ合わない国の子どもたちでも、遊びや食事に名前を呼べば飛んでくる。
 昨年12月に95歳で亡くなった南アフリカのマンデラ元大統領は、46歳から73歳になるままで、27年間も獄中にいて46664番と呼ばれていた。75歳で大統領になり、自分を監獄にいれたアパルトヘイト(人種隔離政策}を勧めた白人たちを憎むのではなく許しあい和解する働きをすすめた。マンデラ氏の和解の原動力の一つは、27年もの間、名前を呼ばれることもなく、物のように扱われた46664番であった。
 誰でもがその人らしく生きる人権の基盤が名前なのだ。名前で呼び合うことから人としてのつながりがはじまる。
総主事 田口 努

写真は県内で一斉に行ったサッカークラブの東日本大震災復興支援募金活動